炭素鋼SC材と合金鋼SCM材の違いについて、焼入れ性との関係性について解説

知識
組立君
組立君

監督〜

前回は、SS材、SM材、SPC材を解説してもらいました。

質問があります。

機械のシャフトやピンに、SC材やSCM材が使われていますが、

SS400材とSC材との違いと、合金鋼との使い分けされている違いがわかりません。

解説をお願いします。

現場 監督
現場 監督

よっしゃ!

機械構造用炭素鋼(SC材)と機械構造用合金鋼(SCM)の違いは、

炭素鋼と合金鋼の違いやけどな〜

使い分けとなると、焼入れと機械的性質を理解する必要があるんや〜

順番に解説していくで〜

前回の解説で、低炭素鋼の解説をしてるから、それもチェックしてみてや〜

この記事は、下記の質問にお答えします。

  • 機械構造用炭素鋼とは?
  • SC材の種類と特徴とは?
  • SS400とS45Cの強度と硬度の比較を解説
  • SC材の化学成分表から理解する特性の違いについて解説
  • 機械構造用合金鋼とは?
  • SC材とSCM材の違いについて解説
  • SCM材の種類と特徴について解説
  • H鋼(焼入れ鋼)とは?
  • 合金鋼の種類と特徴を

レベル1 機械構造用炭素鋼

まずは、機械構造用炭素鋼きかいこうぞうようたんそこうのSC材やな〜、図解は、下記や!

この図解は、S45Cの成分で示してるんや〜

機械構造用炭素鋼きかいこうぞうようたんそこうは、SC材と言われ、20種類あるんや、SS400と同様に、流注量が多く、

汎用性はんようせいがある材質なんや! 機械構造用きかいこうぞうようと言われるんやから、用途ようとは、機械の部品に使われてるんや

SS400との違いは、成分の規定値の違いで、炭素、リン(P)、硫黄(S)が厳しく規定されてるんやな〜

超重要なんは、調質材ちょうしつざいと言うことなんや! 調質ちょうしつは、熱処理ねつしょりで硬度、強度を調整することやで〜

要は、熱処理をすることで、本来の機械的性質きかいてきせいしつを出してることなんや〜

本来と言うとやな〜、例えば、S45Cの元々の生材の状態だと、降伏点も引張強度もSS400と変わらない

数値なんや! 製鉄所からできてきたのは、生材(焼入れしていない状態)なんや!

図解で提示ていじしている降伏点と引張強度は、焼きならし後の数値で、

SS400の引張強度の400Nに比べると、高い数値になっとるんや!

S45Cの焼入れ、焼き戻し後の参考値では、引張強度 690N、降伏点 490Nとなっとるんや!

まとめると、下記やな〜

 材質      降伏点   引張強度  
 SS400  235 400〜510  
 S45C(焼ならし)  345 570
 S45C(焼入れ/焼き戻し)  490 690
単位:N /㎜2                                 (参考値)

降伏点こうふくてんが高いとは、弾性変形だんせいへんけいの数値が高く、変形しずらいはがねと言えるんや、剛性ごうせいがあると言うことや

また降伏点は、引張強度と比例するので、引張強度も高くなるんや、もちろん硬度こうども高くなるんやで〜

用途としては、機械部品で、強度が必要な部品や、例えば、シャフトや荷重かじゅうがかかるピンなど、

強度が必要で摩耗する箇所に使われるんや

SC材は、種類が多く、20種類あるんやで〜、化学成分をまとめた表を下記に出すで〜

全種類は、表にできんかったけど、代表的なものをまとめたんや

Sは、スチールで、Cは、炭素と言う意味や、数値は、それぞれの炭素量によって、種類の記号が

表されてるんや!まあ、俺的に一番使うんは、S45Cやな〜

S45Cは、丸鋼のラインナップが多いので、一番使われとるんやないか〜 

丸鋼から削り出せるシャフトとか、ピンとか、あとは、ボルトやな〜

次は、S50Cやな〜 これは、角鋼や鉄板のラインナップが多いんや

調質鋼ちょうしつこうとしては、炭素量が多くなると強度と硬度こうどが上がるんは、前から解説しとる通りやな〜

硬度が上がる代わりに、もろくなるんやったな! ここ重要なポイントやで〜

はがねの熱処理については、下記の記事で詳しく解説しています。

S10Cより、S45Cの方が、炭素含有量たんそがんゆうりょうが多いので、強度も硬度も高くなるけど、もろくなるんや!

なので、部品の用途によって、使い分けがなされてるんや!

焼き入れには、全体焼ぜんたいやきき入れ(ズブ)と表面焼き入れがあるんやけど、れが懸念けねんされる箇所には、

炭素量が低い材質が選定されて、熱処理で、強度を調節してるんや

例えば、ギアなどの相手との接触面だけ、硬度こうどを上げ、内部には、靭性じんせいを持たせたい時の場合は

炭素量の低い材料を選定して、高周波焼入れなどで、表面の硬度を上げてるんや!

ここで、俺が言いたいんは、S45Cを採用さいようしていたけど、部品の割れがあった場合、

硬度こうどを下げて、焼入れ方法を変えるとか、鋼材こうざいの知識と熱処理の知識があれば、

対応の幅が広がるっちゅうこっちゃ!

あとは、切削加工性がいいんやな〜 どうゆうことかと言うとやな〜

SS400と比べて、炭素量とリンと硫黄が厳しく規定されているので、削っていて安定するんやな〜

これもめっちゃ重要なポイントやで〜

SS400と比べて、炭素量によって硬度が上がっていくので、もちろん加工が困難になるんやけどな〜

また、熱処理をすると更に硬度が上がるので、切削加工後に熱処理を行なって、最終的な

調質を行ってるんや〜 材質や形状によって、選定されてるんやで〜

レベル2 機械構造用合金鋼

 次は、合金鋼やな! 図解は下記やで〜

機械構造用合金鋼きかいこうぞうようごうきんこうで有名なんは、SCM材や! 

合金鋼ごうきんこうは、5大元素以外のクロム、モリブデン、ニッケルが添加てんかされている材質や

その中でもSCM435は、代表格で、よく使われる材質やで〜 

汎用性はんようせいがあるので、ボルト、ナットでも使われるんや!

六角穴付きボルトに使われている材質やで〜 下記のボルトは、SCM435やで〜

SC材と同じで、調質材ちょうしつこうなんや! なので、熱処理をすることで、機械的性質きかいてきせいしつを高めてるんや

SCM材の化学成分を表でまとめると、下記になるんや

SCMの次の数字が上がれば、炭素量が増えるので、強度と硬度が上がるんや

そんで、溶接性が落ちていくんや! 熱影響ねつえいきょうもろくなる関係やな〜

鋼材と熱影響に関しては、下記の記事を参考にして下さい。

強度と硬度をまとめると、こんな感じや!

記号引張強度
 N/㎜2
 硬度 
 HB
SCM415 830以上  235〜321 
SCM418 880以上 248〜331
SCM420 980以上 262〜352
SCM421 980以上 285〜375
SCM435 930以上 269〜331
SCM440 980以上 285〜352
(焼入れ、焼き戻し後の参考値)

数値は、焼入れ焼き戻し後の参考値やけど、かなり高い数値になっとるやろ〜

機械的性質きかいてきせいしつの高い材質と言えるんや〜

S45Cとの比較を強度きょうど硬度こうどでまとめるとやな〜 こんな感じや!

記号降伏点
 N /㎜2
引張強度
 N/㎜2
伸び
シャルピー衝撃値
 J /cm2
 硬度
 HB
S45C 490 690 17  201〜269 
SCM435 785 930 15  78 269〜
(焼入れ、焼き戻し後の参考値)

もう一つ知識として、必要なんは、H鋼(焼入れ鋼)のことや!

H鋼とは、型鋼のH型鋼のことではなく、焼入れで表面硬度ひょうめんこうどだけではなく、

内部への硬さの推移すいいまで保証したものを、H鋼と言っていることなんや!

要は、H鋼とは、化学成分の数値を重要視しているのではなく、

熱処理した後の表面硬度だけでなく、内部の硬さまで保証したものなんや〜

主に肉厚の大型部品に使われているんや!

引用先:モノタロウ

上の表は、焼入れ性曲線と言ってな〜、上の線が上限値を示していて、下の線が下限値や

H鋼とは、硬度と焼入れ深さを保証してるんやで〜

例えば、9㎜の深さでは、最高値(55)最低値(45)のロックウェル(HRC)硬度を

SCM435Hは、保証してるっちゅう意味やで〜

他の合金鋼も解説するけどな〜、機械の部品で使われるのは、下記の材質やな!

5大元素以外を添加てんかしてるのが、合金鋼で、分類は、はがねやな〜

けど、上記の材質は、機械のフレームや主軸と言った強度の必要な部品やエンジン内部の部品などに

使われてるんや、鍛造品や鋳造品が多いと俺は思うで〜

鍛造加工たんぞうかこう切削加工せっさくかこうとあと一つが、鋳造加工ちゅうぞうかこうだったな〜

はがねの分類を鋳造加工ちゅうぞうかこうしたものが、鋳鋼ちゅうこうはがね鋳物いものやな

鋳鉄ちゅうてつの分類の鋳物いものは、鋳鉄ちゅうてつだったな〜、この認識は、重要やで〜

添加物によって、機械的性質きかいてきせいしつが変わるんやけどな〜その目安は、こんな感じやな〜

合金鋼で、機械部品に使われてる材質は、

クロム鋼、マンガン鋼、クロムモリブデン鋼、クロムニッケル鋼の4つ位かな〜

特徴は、炭素の含有量が多いと、硬度が上がり、焼入れ性も上がるが、脆くなるので、

他の添加物を入れて、強度きょうど靭性じんせい延性えんせいを高めているんや

どれもH鋼があることが、重要なや! 

炭素の含有量や添加量の細かい数値は、覚えなくていいと思うけどな〜

こんか材質もあるんや! こんな特徴があるんや! 

その程度は、理解しといた方がいいと俺は思うで〜

強度と硬度を比べると、やはり焼入れ性が良いのは、SM材よりSCM材の方が上やな〜

炭素量だけではなく、他の添加物の影響が大きいっちゅうこっちゃ!

しかし、機械構造用炭素鋼や機械構造用合金鋼は、錆びやすい性質があるので、切削後せっさくご防錆材ぼうざびざい塗布とふ

必要になるんや!

錆びないようにするには、表面処理が必要となるんやで〜

SCM435 クロモリのボルトは、上記の様に、黒くなってりるけど、これは、クロモリだから

黒くなっているんじゃないや〜

酸化鉄被膜処理(黒染め)をほどこしてるから、黒くなるんや!

要は、薄い皮膜に覆われるように、めっき処理されてるんや!

同じ、SCM435のクロモリでも、めっき処理された光沢のある処理方法もあるんやで〜

色んなめっき処理があるんやな〜と、理解しといてや〜

めっき処理の詳しい解説は、次回とするで〜、下記を参考にしといてや〜

http://hakuyokinzoku.co.jp 有限会社白洋金属工業
組立君
組立君

SS材とSC材、SCM材の解説ありがとうございました。

各材質を比較することで、よく理解できました。

やはり、炭素量が多い材質は、硬度が上がるんですね〜

そのかわり靭性じんせいが下がるし、溶接性も悪くなるんですね。

現場 監督
現場 監督

その通りやで〜

SC材やSCM材は、調質材ちょうしつざいだと理解することが必要なんや〜

そのままの生材としても使われるけどな〜

熱処理を行なって、本来の性能を上げて、使うことが

機械屋にとって重要やし、その特性を理解しておくことが、

めっちゃ重要なポイントやで〜

組立君
組立君

やはり、熱影響ねつえいきょうひずみと脆性破壊ぜいせいはかいもろくなり破壊はかいする事)の関係は、

どこまでも続くんですね。

現場 監督
現場 監督

その通りやで〜 よく理解しとるやないか〜

レベルが上がってる証拠やで〜

製鉄所から出来てきた生材をどのように、加工して、熱処理して、

最後に、めっき処理して、機械に組み込んでいくんやけどな〜

金属加工とめっき処理の知識も必要となってくるんやで〜

次回以降で、詳しく解説するで〜

次は、鋳鉄系の材質の種類と特徴を解説するで〜