この記事の内容は、下記の質問にお答えします。
- 機械的性質とは、どんな性質なの?(機械的性質を細分化して解説)
- 弾性変形と塑性変形の違いは、どんな違いがあるの?
- 鉄の強度とは、どんな強さなの?(降伏点と引張強度の違いについて解説)
- 鉄の硬度とは?(硬度の単位、硬度の測り方、硬度の数値化を解説)
- 衝撃値とは?(シャルピーの衝撃値、吸収値について解説)
監督!前回の解説で、鉄には、分類があり、
鉄と鋼と鋳鉄のレンジがあることが、分かりました。
特徴として、炭素の含有量が多くなれば、硬度が上がるかわりに、脆くなる性質が
あるんでしたね。炭素量が多いと、熱影響が大きいので、溶接性は悪くなるけど、
焼き入れ性は上がるんでしたね。そして、
鋼のレンジの中でも、炭素鋼(5大元素で造られる鋼材)と
合金鋼(5大元素とそれ以外を添加して造られる鋼材)があることが分かりました。
溶接性に関しては、炭素含有量が0.2%前後が最適で、
SM材が溶接構造用鋼材でしたね。
炭素含有量が少ない鋼材は、SS材、SPC材、SM材とがあり、
合金鋼の高張力鋼やHARDOXは、炭素含有量を落として、溶接性も良くして、
尚且つ、クロム、ニッケル、モリブデンなどの元素を添加することと、
調質(焼き入れ・焼戻し)をすることで、機械的性質を上げているんでしたね。
鉄の分類は、3つあります。純鉄 鋼 鋳鉄 詳しくは、下記の記事を参考にして下さい。
その通りやで!よく理解しとるやんけ!
監督〜!
機械的性質のワードが時々出てきますが、よく分かりません。
もう少し、解説をお願いします。
よっしゃ!今回もバコーンと、解説いくで〜
レベル1 機械的性質
機械的性質とは、機械特性とも言われるんや!
鉄の優劣を決める物差しで、また、数値化された成績表の項目みたいなもんやねん!
数値化されへんと、優劣はわからんやろ!
鉄の成績表の項目はというと、硬度、靱性、延性、脆性があったけどな!
もっと重要な項目が、強度やねん!
強度と言っても色々あってな、重要なんは、
引張強さ(最大強度)、降伏点、硬度、衝撃値があんねんな!
鉄の優劣 良し悪しを判断する項目として、鉄の強度を詳しく解説するで〜
まずは、引張強度から説明するけど、そも前に、鉄の変形について、解説しとくで〜!
レベル2 弾性変形と塑性変形
上のグラフは、鉄の引張強度を示しているグラフで、よく見かけるけど、鉄の変形の特性には、
弾性変形と塑性変形があるねん!
鉄は、力を加えると変形をする性質があるんやけど、
直ぐにポキッとは、折れたり、壊れたりしないんや!
弾性変形とは、ある一定まで引っ張る力に対して、元に戻る変形のことを言うんや!
弾力がある鋼材という意味やで!
しかし、ある一定の力を、更に加えると、弾性の限界が来て、元に戻らなくなるんや
その戻らなくなる点が、弾性の限界で、弾性限度=降伏点とも言うんや!
負けたー!みたいな感じやな!もう戻れへ〜ん!みたいな感じやな!
弾性変形に対して、元に戻らない変形のことを塑性変形と言って、永久歪とも言われるんや!
塑性変形を利用しているのが、プレスなどの曲げ加工なんやで!
そんでな、更に力を加えると、最大強度まで、歪=変形していき、最大強度を超えると
亀裂が発生して、強度が落ちて、破損してしまうんや!
レベル3 降伏点と引張強度
もう一度、下のグラフの降伏点から破断までを解説するとやな!
まず弾性限度を超える力がかかると、鉄は元に戻らなくなり塑性変形を始める
降伏点を超えてしまうと、塑性変形は続き、力を弱めても、変形は続くんや!
しかし、鉄は、ここから更に力を加えないと、
つまり、降伏点を超える力を加えないと変形しなくなるんや!
ここが重要なポイントで、鉄の優劣を決める引張強度は、赤のポイントの最大強度だと言うこっちゃ!
降伏点が引張強度ではなく、そこから更に強い力の最大強度が引張強度で、
鉄の優劣を決める項目なんや!
最大強度を超えると、亀裂が発生して、最大強度を下回る力でも変形していくが、
最終的に、破断してしまうんや!
降伏点と引張強度は、比例する関係にあるから、降伏点が高い材料は、剛性があり、強い鉄と言えるし
引張強度を超えて、破断する時も、伸びながら徐々に破断すると、延性がある材料と言える、また
引張強度を超えて、粘り強く、耐えながら、破断する材料は、靭性がある材料と言えるんやで!
鉄の変形(歪み)と応力(力)の関係が分かりました。
弾性変形と塑性変形があり、変形しにくい鉄が剛性があり、強い鉄なんですね。
鉄の引張強度を決めているのは、最大強度で、降伏点を超えて、更に強い力を加えて、
変形していき、最終的に破断してしまうんですね。
その破断の際も、伸びながらや耐えながらで、延性があったり、靭性があったりと
それぞれの鉄の機械的性質があるんですね。
いい〜感じで理解してるやんか!
そのお通りやで! 楽勝やろ!
次は、硬度と衝撃値やな!
ほな!解説いくで〜!
レベル4 硬度
次に硬度について、解説するで〜!
硬度とは、鉄の硬さのことで、硬いとは、傷のつきにくさと理解すればいいと思うで!
下の表は、硬度変換表の一部を、俺的にまとめたものやけど、簡単な抜粋表で
数値は参考値としてくれや!
縦軸に今まで出てきた材質があり、(SS材、S45C…)
横軸にピッカース硬さ、ブルネル硬さ、ショア硬さ、ロックウェル硬さがあるんや!
硬度の単位は、複数あり、それぞれ、ピッカースさん、ブルネルさん、ショアさん、
ロックウェルさんが導き出した算出方法で、数値化されているんや!
各単位=数値が違えど、同一の試験片では、硬度は変わらないから、硬度の表記には、
換算表で、比較することができるんや!
例えば、ピッカースのHV表記の試験片の硬さと、ブルネルのHBの表記の試験片の硬さを
比較したい場合は、どちらかの単位に統一して、比べる必要があるやろ!
そこで、役立つのが換算表で、ピッカースでは、120HVだけど、ブルネル硬さでは
114HBと言え、どちらかに置き換えて、見比べれば、同等の硬度と言えるやろ!
この4つ以外の硬度の単位もあるけど、ここでは取り敢えず、この4つで解説するで〜!
次に試験方法の説明やけど、下の図解を見てほしいんや
ピッカース硬さとロックウェル硬さの試験方法を図解にしてみたけど、
まず、ピッカース硬さ試験は、ピラミット形状で、ダイヤモンド製の圧子と呼ばれる工具を
試験片に押し付け、傷をつけるんや、傷の大きさを測って、どのくらいの力で
どのくらいの大きさの傷がついたかを、計測して、数値化してるんや!
ロックウェル硬さ試験は、先の尖った工具を押し付けて、試験片に着いた傷の深さを計測して
数値化した試験方法で、基本的には、同じ考え方の試験方法と言えるわな〜
硬度=硬さとは、傷の付きずらさと言ったけど、この傷の付きずらい硬い鉄のことを
硬度があるって言ってるんやで!
レベル5 シャルピー衝撃値
次にシャルピー衝撃値やけど、シャルピー衝撃吸収値とか、ごちゃごちゃしてるけど、
衝撃値の理解でいいと思うで〜 でも、吸収とはと言うと
まず、試験方法を下の図解で解説するで〜!
棒状の試験片があって、その試験片は、真ん中に敢えて、傷が付けられていて、そこから破損しやすく
されてんねん!その試験片にハンマーを振りかぶって、叩きつけて破壊する試験やねん!
つまり、破壊試験やな! 試験片を破壊するのに、ハンマーをどこまで振りかぶって、叩きつけるかで
破壊に必要なエネルギーを算出してるんや!
それで、破壊した後のハンマーは、逆側に振り上がるやろ〜、その振り上がりの角度を
計測しといて、試験片がどれだけ、破壊エネルギーに対して、耐えたか=衝撃を吸収したかを
計測してるんや!前に、引張強度のところで、破断する時に、伸びながら破断することを
延性破断と言い、耐えながら破断する事を靭性破断と、説明したけど、あれやな!
例えば、振り上げ(振りかぶり)角度を4.5として、試験片を破壊して、振り上がり角度が
2.5と4とを比較すると、4まで振り上がった方が、衝撃を吸収できていない、
衝撃吸収値が低い試験片と言えるんや!
ここでの破断の様子や破断面を研究する事で、鉄の強度がわかるんやで!
延性があるとか、靭性があることな!
この鉄は、「スパッと」割れるように、破断したから、脆性がある=割れやすいとかが、
判断できるんやで!
機械的性質とは、鉄の成績表をつけるときに、必要な項目でしたね。
小学生の時の体育の鉄棒の評価みたいな感じですね。
A B C D みたいな感じですね。数値化しないと、良し悪しが判断できないですからね。
その中で、数値化されているのが、
引張強度、硬度、シャルピー衝撃値でしたね。
あと、伸びる性質=延性 耐える性質=靭性 脆い性質=脆性
変形しずらい性質=剛性とかが、あるんでしたね。
その通りやで〜
よく理解しとるやんけ! 楽勝やろ!
鉄の評価に関しては、もっとあると思うけど、今後、組立くんが
鉄に関しての資料を読んだり、材料屋さんと打ち合わせをするレベルでは
このあたりを理解しとけばいいと思うで〜
硬度に関しても試験方法や単位は、まだあるけど、今回の4つを覚えておけば、OKやで〜!
まあ、どの単位でも換算表があるから、今回は、説明しやすいように
抜粋の表にしたけど、鉄や非鉄、いろんな材料の硬度一覧表がり、換算表があるから
見比べつと役に立つと思うで〜
監督〜!! 質問です。
炭素が多いと硬度が上がったり、熱を入れると硬度が上がったりと、鉄が何で硬くなったり、
柔らかくなるのかが、理解できません、
溶接性に関しても、よくわかっていません。
教えたください。
お〜!ナイスな質問やな〜!
やっぱり、そこは、気になるよな〜〜!
わかるで〜その気持ち!
でも、熱影響に関しては、次回にしょう
溶接に関しては、熱影響を理解した上で、溶接の知識を深めてからの解説にしようや!
その解説の流れが大事で、理解の順番を、エクストリ〜ム(川の流れの様に)で解説すると、
もっと理解が深まると思うから、次回もバコーンんと解説するで〜
楽しみにしといてや!
鉄の熱影響について、熱影響を受けると鉄の組織はどうなるの?
次回は鉄の熱影響について解説しています。是非、参考にして下さい。