鉄の製造プロセスから学ぶ鉄の分類、鉄の炭素含有量は、どうやって調整してるの?「徹底解説」

知識

この記事の内容は、下記の質問にお応えます。

  • 鉄の製造プロセスとは?(鉄の種類は色々あるが、どのように作り分けてるのか、解説)
  • 鉄の原料とは?(コークスと焼結鉱はどのように製造されているのか、解説)
  • 還元作用とは?(鉄を作り出すためのに必要な化学変化、還元作用について、解説)
  • 転炉の重要性とは?(転炉ではどんな働きがあるのか、解説)
  • スラグの正体とは、(不純物はどうして出てしまうの?)
  • 炭素含有量は、どのように調整されているの?
  • 圧延加工とは?(鉄板 形鋼 丸鋼 角鋼 どのように製造されてるのか、解説)
  • 熱間圧延加工と冷間圧延加工の違いとは?
  • 黒皮=酸化被膜とは?(圧延鋼材の黒皮の正体とは?)
組立君
組立君

監督〜!

今回は、鉄の製造工程の解説なんですよね〜

質問が2つありました。

1)鉄の炭素含有量は、どのように調整しているのか?

2)圧延あつえん加工とは、どのような加工なのか?

詳しく解説をお願いします。

前回の解説で、浸炭焼入しんたんやきいれを解説してもらいましたが、

木炭の炭を、炭素(C)として、抜き出して、鉄(Fe)に、固溶こようさせれば、

Fe Cの出来上がりじゃないですか〜!?

その時に、多くの炭素を固溶こようさせれば、鋳鉄ちゅうてつになるし、少なくすれば、はがねのレンジに

なるんじゃないでしょうか?

現場 監督
現場 監督

いいポイントに着目しとるやないか〜 

確かに、木炭から炭素を抜き出して、

鉄(Fe)に、ぶっ込む発想は、悪くないと思うで〜!

やりよるな! 組立君!

しか〜し、ちょっと違うんやな〜!

今回は、はがねの種類を解説する前に、鉄の製造工程をザザ〜と解説して、

レベルを上げていこうか〜

機械屋としては、鉄の製造プロセスには、あまり興味がないかと思うが、

必要な分だけでも、知識として、入れとこうと思うんや!

ほな早速、解説いくで〜!

レベル1 鉄の原料とは

一般社団法人日本鉄鋼連盟 https://www.jisf.or.jp/kids/shiraberu/index.html

まず、この資料から解説するで〜  

鋼材こうざいが出来るまでのプロセスをまとめた図解や!

鉄の主原料は、コークスと焼結鉱しょうけつこうやな!

まず、コークスとは、石炭をコークスで、むしきにしたものを言うんや!

石炭をそのまま燃やせば良いのにな〜!って、思うけどな〜

普通に燃やすと、ガスが発生して、燃えまくるんやけどな! 煙もでんねんな〜

学生時代にこんな実験した事ないか〜!?

左上の試験管の中で、割り箸(まき)を、し焼きにする実験やで〜

まきの中身は、酸素、窒素、水素、炭素を含む有機物なんやけどな!

まきに火をつけて、燃やすと、キャンプファイヤーやな!

ガスが発生して、ボーボーー燃えよるんや!

化学反応で言うとやな!水素は、酸化して、水になり、蒸発すんねん!

炭素は、燃えて、酸化して、二酸化炭素へ化学変化するんや! 

残りの炭素は、カルシウムと一緒になり、はいになるねん!

し焼きにする理由は、酸素が少ない状態で、し焼きにすると、料理で言うとグリルやな!

酸素があれば、酸化して、CO2の大発生や! 酸素がなければ、CO2の発生がなく

一酸化炭素は発生するが、炭素が残るねん

だから、木炭には、炭素(C)が、ぎょうさん入っとんねん!

これを、石炭でも同じことが言えて、炭素がぎょうさん詰まったのが、コークスやねん!

試験管の実験のように、ガスは発生してるけどな、コークス炉で、ガスjは、回収されてるんや!

木炭もコークスも、特徴としては、

煙が少なく、長時間、熱を保持して、火力が安定してるんや! 

そして、焼き固めてるから、コークスは、硬いねんな!

この硬くて、壊れにくいが、重要やねん!

コークス炉では、図解の右側のように、木炭をかまに入れて、かまの中を密閉して、最小限の酸素で

かまを外から燃やし、中のまきを、し焼きにすることで、木炭ができるんやけど、

コークス炉では、同じことを、石炭で行ってるんや! 

焼結鉱しょうけつこう(鉄鉱石)は、粉状の鉄鉱石てっこうせきと粉コークスを、焼き固めることで、製造されてんねん!

焼結しょうけつとは、焼き固めること!

JFEスチール株式会社  https://www.jfe-steel.co.jp/release/2018/02/180227.html

焼結設備しょうけつせつびは、上記の感じやな!

パレットに、焼結原料しょうけつげんりょう(粉鉄鉱石と粉コークス)を、めて、バーナーで点火して

燃やすねん! パレットの下側は、5mm以下の隙間があり、風通しがいいねん!

左側の点火炉てんかろで、着火すると、コークスが燃えて、バチバチ温度が上がるんや

パレットの下から空気を吸うことで、上から酸素が吹き込まれ、

コークスが鉄鉱石てっこうせきの中で、よく燃えながら、左から右へパレットは進んでいくんやけど、

右側に進むにつれて、だんだん、冷めて固まっていくんや!

パレットが右の端まで進むと、焼き固められた焼結鉱しょうけつこうが、冷めてやな〜

パレットから落ちた時に、破砕機はさいき破砕はさいされて、次の工程で、規定の大きさに、篩い分けられて、

高炉へ運ばれるんや! 5㎜以下の粉の焼結しょうけつは、高炉こうろにはいかず、再度、リサイクルされんねん!

要は、鉄鉱石もコークスも粉状のものは、必要なく、破砕と篩い分けにより、

規定の大きさ(5mm以上)をそろえることが、重要やねん!

レベル2 高炉の還元作用

鉄の原料である(焼結鉱とコークス)を、高炉内に、そうになるように、めんねん!

その時に、重要なんは熱風が充満じゅうまんするように、めた焼結鉱しょうけつこうやコークスとの隙間が

必要やねん! めるからな! 硬度(硬さ)も必要やねんな〜!

重ねてしきめるからな、押しつぶされると粉状になるやろ! 

そしたらな! 熱風が通り難くなり、温度が上がらへんねん! だから、硬さが重要やねん

高炉内は、化学反応のオンパレードや! 

酸素を含んだFeO3が、還元されて、鉄となるんや!

還元かんげんとは、酸化の逆で、酸素がなくなることや!

①コークスは、高炉内で燃えて、酸素と反応して、二酸化炭素になり、

②二酸化炭素と炭素(C)の反応で、一酸化炭素ができる

③一酸化炭素と鉄の還元反応で、鉄と二酸化炭素ができるねん!

まとめると、図解の右下を見て欲しいんや

鉄にくっつていた酸素(O)は、一酸化炭素と結びつき、二酸化炭素となることで、

鉄が現れるんや!

まさに、浸炭焼しんたんやきき入れの時の、化学反応のオンパレードと同じやな!

浸炭焼入しんたんやきいれれも、高炉こうろ還元作用かんげんも、鉄にくっ付いている酸素が反応して、

還元かんげん)されて、鉄が出てくんねん!

この高炉の下から出てきたのが、ドロドロに溶けた銑鉄せんてつやねん!

この時の銑鉄せんてつ(ドロドロに溶けた鉄)には、炭素が4%〜5%含まれてるんや!

要は、炭素の含有量が、この時点で、4〜5%あり、鉄の分類で言うとやな!

鋳鉄のレンジにあるんや!

鉄鉱石てっこうせきを高温で加熱すると、コークスの炭素が、鉄と固溶こようして、

炭素含有量が多い、鋳鉄系の材料の出来上がりやねん!

重要なんは、次の工程や!

レベル3 転炉(炭素量の調整と不純物の除去)

転炉てんろの役割は、2つあるんや!

1つ目が、精錬せいれんにあるんや! 精錬せいれんとは、不純物ふじゅんぶつ除去じょきょの意味やな!

鉄には、リンや硫黄などの炭化物たんかぶつがあるのは、前に説明したと思うけど

5大元素の中の2つの元素や! この2つの元素は、はがねになる過程かていでは、含まれる量に、

規定があるんやったな! 多く含まれると、強い鋼にはならないんや!

右側の図解を見て欲しいんや 

転炉内てんろないでは、生石灰きせっかいが入れられ、この2つの元素と化学反応を起こして、不純物ふじゅんぶつのスラグとして

浮き上がってくるんや! 要するに、純度のいい鉄と、不純物のスラグに分けられるんや

これが、めっちゃ重要やねん!この反応が上手くいかないと、不純物ふじゅんぶつざった鉄になり、

炭化物たんかぶつ(リンや硫黄)が混ざると鉄は強くならないんやな〜

2つ目が、炭素含有量の調整や! 転炉てんろないに酸素を吹きこむ事で、FeCの炭素(C)が、

酸素(O)と反応して、抜き取られて、炭素含有量の少ない鋼のレンジになるんや!

組立君
組立君

監督〜! わかりましたよ〜!

製鉄のプロセスの高炉では、

鉄の中の酸素を化学反応(還元かんげん)によって、取り除くんですね。

2200度になった銑鉄せんてつは、高温状態で、炭素と固溶こようしてるんですね。

その時の炭素含有量が、4%〜5%なんですね。

と言うことは、銑鉄せんてつは、硬くてもろい状態なんですね。

現場 監督
現場 監督

そう言うこっちゃな! やはり、よく理解しとるやんか! さすがやな〜!

Fe C系の平衡状態図へいこうじょうたいずの解説は、鋼材編で、詳しくやってるけどな、

転炉内で、炭素の含有量の調整が行われて、はがね炭素含有量たんそがんゆうりょうになるんや! 

例えば、S45Cなら、炭素含有量が、0.42〜0.48%のように調整され、

SCM435なら、炭素含有量の調整とモリブデンの添加物の添加も

この転炉てんろで行われてるんや!

組立君
組立君

そうだったんですね!

鉄鉱石てっこうせきを高温で溶かすと、鉄(Fe)とコークスの炭素(C)とが、固溶して、

高い含有量の鋳鉄系のレンジになるんですね。

1つ目の質問だった 炭素の含有量の調整は、この転炉での精錬せいれんにあるんですね。

現場 監督
現場 監督

そうゆうこっちゃな!

なので、入れていくんじゃなくて、抜いていくのが、答えだったんやな〜!

転炉内で、炭素の含有量の調整や、精錬せいれん(不純物の除去)、添加物てんかぶつの調整を行なったはがね

連続鋳造設備れんぞくちゅうぞうせつびで、ビレットやブルームやスラブと言った形の綱片こうへん鋳造ちゅうぞう加工されるんや!

鋳造ちゅうぞう加工は、鋳物(いもの)の製造方法だったな! 鉄をドロドロに溶かして、型枠に流し込んで、

型枠内で、冷やすことによって、整形する加工方法やったな!

ここまでが、製鉄せいてつの第一段階やな! この鋼片こうへんが、最終加工前のはがね半製品状態はんせいひんじょうたいや!

最終加工では、板状や棒状、パイプ状などに、最終加工されるんやけど、

ここ(連続鋳造設備れんぞくちゅうぞうせつび)では、最終加工しやすい形状と大きさに粗加工あらかこうされるんや!

それが、スラブ、ブルーム、ビレットやねん!

組立君
組立君

このスラブは、鋳造ちゅうぞう加工で、一度、ドロドロの液状になるけど、

整形されて、冷やされた状態では、平衡状態図へいこうじょうたいずの鋼のレンジになり、

組織は、フェライト組織とセメンタイト(Fe3C)になってるんですね。

現場 監督
現場 監督

そうゆうこっちゃ! またまた、理解が爆裂の炸裂やんけ〜

俺の解説が、追いついとらんやんけ〜! 

その通りや、スラブやビレットは、各材質によって、炭素含有量や

添加物てんかぶつによって、材質は、違うけどな! 組織は、セメンタイト組織なんや!

炭素の含有量によって、パーライトやセメンタイトの量が違ってくるんや!

最後に、出てくるのが、圧延加工あつえんかこうなんや!

これが、質問の2つ目の答えや! どんな加工かと言うとやな!

レベル4 圧延加工あつえんかこう

圧延加工とは、半製品であるスラブやビレットを加熱炉かねつろで、再び熱した状態で、2つのローラーの間を

通すことで、整形していく加工方法や! 加熱するが、加工しながら、徐冷じょうれいされてんねん!

一般社団法人日本鉄鋼連盟 https://www.jisf.or.jp/kids/shiraberu/index.html

鉄板は、この様に、大きな上下のローラーを通すことによって、規定の厚さに加工されてんねん!

H鋼の様な、形鋼かたこうも、この圧延機あつえんきによって、整形されてるんや!

http://www.jfe-21st-cf.or.jp/jpn/chapter_3/3d_1.html   KAWASAKI STEEL 鉄鋼プロセス工学入門

熱間圧延加工ねっかんあつえんかこうと比較される加工方法に、冷延(れいえん)加工があるんや!

読んで字の如くなんや! 熱間圧延加工ねっかんあつえんかこうは、加熱炉かねつろで加熱してから圧延機あつえんきにかけるけど、

冷延加工れいえんかこうは、加熱炉に入れないで、そのまま延ばして、加工するんや!

一般社団法人日本鉄鋼連盟 https://www.jisf.or.jp/kids/shiraberu/index.html

違いは、温めた状態の方が、ビヨ〜〜んと伸びていくがな〜!

冷たい状態だと、伸びにくいんや! だからな! ゆっくる、少しずつ伸ばしていくんや!

要は、加工に必要な力と時間が、熱間圧延加工の方が小さくて、少なくて済むんや!

他の違いはと、言うとやな〜!

組立君
組立君

その違いは、熱影響にあるんじゃないでしょうか????

材料によっては、熱膨張してしまい、加工精度にバラツキが

出てしまうとか???  

現場 監督
現場 監督

その通りや!  ホンマ! やりよるな!

詳しく、解説するで〜!

まず、予想の通り、加工精度かこうせいどは、冷間圧延加工れいかんあつえん加工の方が、精度せいどはいいんや!

熱間圧延ねっかんあつえんだと、熱影響があるので、材料によって、線膨張係数せんぼうちょうけいすうがあり、

熱影響を受けまくるんやったな!

要は、熱を入れると、歪みが出るんやったな!

あとは、900度から1200度まで加熱するからな、加工中に、鋼材の表面は、空気中の酸素と反応して

酸化被膜さんかひまくができてしまうねん! はがねの表面は、綺麗きれい光沢こうたくがなくなり、寸法精度すんぽうせいども落ちる原因に

なってしまうんや! この酸化被膜さんかひまくが、黒皮くろかわちゅうやつやな! 

冷間圧延加工れいかんあつえんかこうは、酸化被膜さんかひまくができないので、表面は、綺麗きれい光沢こうたくがあるんやで〜!

冷間圧延加工れいかんあつえんかこうのデメリットは、加工(延ばす)の難しさと、もう1つは、

冷たい状態と言っても、冷やすわけではなく、常温で加工するんやけどな〜

何度も加工機にかける必要があり、時間も必要とするんやけどな!

加工硬化かこうこうかしてしまうねん!

加工硬化かこうこうかとは、加工途中かこうとちゅうに、硬度こうどが上がってしまうことなんや!

組立君
組立君

え〜〜〜! 熱影響を受けていないのに、硬くなるんですか〜〜!!??

現場 監督
現場 監督

加工硬化かこうこうかは、熱影響とは、ちょっと違うんや!

例えば、組立君は、針金を切るときに、ニッパーや切断器がない時に

どうやって、切る??

組立君
組立君

うむ〜〜! 難しいですね。

ニッパーで切るのが、簡単ですが…

クネクネ、何度も同じところを曲げて、強引に切断したことがあるます。

現場 監督
現場 監督

それが、加工硬化かこうこうかや!

同じ箇所を、何度もクネクネ=加工しているとやな、鉄は、硬くなるんや!

硬くなる=もろくなるんやったな! 

あの針金の切断、クネクネ & ボキッとは、

加工硬化かこうこうかして、硬くなり→もろくなる  

脆性破壊ぜいせいはかいなんや! 脆性ぜいせいとは、もろくなることやったな!

組立君
組立君

そうだったんですね。

その脆性ぜいせいが起こってしまうんですね。

それは、冷間圧延加工れいかんあつえんかこうの製品にとっては、よくないじゃないですか?

使用中に、ポキッと破壊はかいしてしまうんじゃないですか〜!?

わかりました! 硬化したのなら、弱くすればいいんじゃないですか??

あれですね。強いから弱いのイメージの熱処理ねつしょり!!

現場 監督
現場 監督

そうや〜〜〜〜!

そ〜れ〜は! 完〜全〜に〜〜

焼きなましやな〜!

なます=なまける=弱くするんやったな!

やりよるな! 組立君 答え言うてもうたやないか〜〜〜!

組立君
組立君

監督〜! 思いだしましたよ! 

熱処理の4つのうちの1つでしたね。

焼きなましですね。

これで、圧延加工あつえんかこうもクリアーになりました。

ここでも、熱影響が関わってくるんですね〜!

あと、炭素の含有量についても、完〜全〜に、理解しました。

ありがとうございます。なんか、スッキリした感じです。

現場 監督
現場 監督

とうとう、ここまできたか〜〜って、感じやな!

これまでの解説の理解があれば、鋼材に関しては、

ほぼ完了したも同然や!

次は、鋼材の種類を解説するで〜!

鉄の製造プロセスは、組立工に関係がないと思うけどな、

転炉での不純物を取り除く為の精錬は、溶接で重要な要素となるんや!

生石灰と炭化物(リンや硫黄)とを化学反応させて、分離する方法やけど、

これが、めっちゃ重要なんやな〜

覚えといてや〜  では、次の解説も期待しといてや〜

鉄の分類とは、純鉄、鋼、鋳鉄に分類されること、鉄の炭素含有量によって分類されている