この記事の内容は、下記の質問にお答えします。
- 平衡状態図とは? (どんな組織の状態なのか解説)
- フェライト組織とは? (フェライト組織の変化について解説)
- 面心立方格子とは?体心立方格子とは? (組織変化と組織構造について解説)
- マルテンサイト組織とは? (平衡状態図にないマルテンサイト組織について解説)
- 変態とは?(変態と状態変化の違いについて解説)
- 炭素鋼の組織変化とは? (パーライト組織について解説)
監督〜! やっと熱影響の解説ですね。
これまで、鉄の分類で、鋼のレンジと鋳鉄のレンジを理解しました。
鉄の分類は、炭素含有量で決まっていました。
その中で、鋼のレンジには、炭素鋼と合金鋼があり、
また、炭素含有量が、重要な要素となっていました。
調質鋼も炭素含有量が重要で、炭素が多く含まれていると熱影響が高く、
調質(焼き入れ、焼き戻し)は、炭素量と熱影響の関係を利用してるんでしたね。
その通りやで! めっちゃいい感じで理解してるやんけ〜! レベル爆上がりやんけ〜!
よっしゃ!今回もバコ〜んと解説いくで〜!
鉄の分類とは、鋼と鋳鉄との違いについて、材料の特性(機械的性質)について解説しています。
レベル1 平衡状態図の見方とフェライト組織
まず、鉄の熱影響に関して解説するには、鉄の組織についての理解が必要なんや〜!
鉄の組織変化に関しては、この平衡状態図が有名やけど、俺なりに図解にしてみたで〜! これや!
平衡状態図の見方やけど!
横軸は、炭素含有量で、縦軸が温度を示しているんやけど、各材質の炭素含有量が横軸にあるやろ
例えば、SM材なら、炭素含有量は、0.23%だから、状態図の真ん中に位置してるんやで、
炭素含有量が0.23%のSM材は、縦軸の温度上昇によって組織変化するんやけどな
727度を超えて加熱すると、フェライト組織からオーステナイト組織に変化するんや
バーナーなどで、加熱して真っ赤にあったまった状態やな!
また、1000度を超えて加熱すると、液体状態となるんや
要は、727度以下の鉄の組織は、フェライト組織で
セメンタイトはと言うと、鉄(Fe)に炭素(C)が連結した金属間化合物で、
炭化物って言われてるんや!
このセメンタイトは、炭素と連結してるから、横軸の炭素含有量が多くなると、炭素量に比例して
増えていくんや! これが平衡状態図の見方やな
左から、純鉄のレンジがあり、鋼のレンジがあり、鋳鉄のレンジになるんやで
しかし、727度以下の組織は、鉄の分類に関係なくフェライト組織とセメンタイト(炭化物)なんや!
何度も言うけどな! 平衡状態図の見方の基本で、鉄の分類に関わらず、鉄の常温時は、
フェライト組織やねん! 炭素含有量によって、炭素が増えるけど、炭素は、鉄と結びついて
セメンタイト(炭化物)となって、存在してるんや!
フェライト組織の構造は、体心立方格子をしてるんや!
これ見たことあると思うけど学生時代に勉強したやつやで〜
フェライト組織の体心立方格子は、格子の隙間が狭く、炭素が侵入できないのが特徴やねん
学生時代で忘れてると思うけど、ここ何気に重要やから追加で説明するで〜
面心立方格子と体心立方格子は、下記の図解やな!
レベル上げてくで〜!
レベル2 面心立方格子と体心立方格子
レベル1の平衡状態図だけでは、わかりずらいから、この図解を作ったけど、
学生時代に勉強した内容やから、ここでは、重要なポイントだけ、理解してや!
ここで重要なんは、温度の上昇による、組織の変形の中で、
炭素が侵入できる隙間があるか、ないかが、重要やねん!
それ以外のことは、バコ〜んと、ぶっ飛ばしていいで〜!
体心立方とか、面心立方とかは、忘れてや〜!
次を急ぐで〜〜〜!
次は、各炭素含有量によって、変化に違いがあるけど、フェライト組織がどう変化するかが、
ポイントになるんやで!
レベル3 平衡状態図とオーステナイト組織
727度以下では、鉄の分類に関係なく体心立方格子の組織形状で、炭素が侵入できないで、
セメンタイト(炭化物)と共存していた組織が、この727度以上の温度領域では
違った変化をするんやで!
例えば、炭素含有量が4.5%の鋳鉄のレンジでは、
フェライト組織がオーステナイト組織となり、1000度近くで、液状となるんや!
ドロドロに溶けた液体状の鉄やな! これが、鋳鉄(炭素含有量が多い鉄)の特徴でもある
低い温度で、ドロドロになるっちゅうことやで! 鋳造に向いてる鉄は、鋳鉄と言うこっちゃ!
SM材(炭素含有量 0.23%)は、1500度で液体となるから、比べると、約500度も違いがあるねんな〜
話を戻すで!
鉄は、727度以上では、オーステナイト組織になるんや!
しかし、それは、炭素含有量によって、ちょっと違ってくんねん!
炭素鋼や合金鋼の鋼のレンジでは、左側やな!ちょっと細かく「フェライト、オーステナイト」と、
小さく書いてある領域があるけど、そこは、炭素鋼の組織変化で、詳しく図解化してるから、
ここでは、ぶっ飛ばしといて、あとで、詳しく解説するで〜
(レベル6で詳しく解説)
727度以上の平衡状態図のポイントはやな、左側(炭素含有量が低い領域)では、
液状になるには、1500度程度の加熱が必要なこと、同じく、左側では、
セメンタイト(炭化物)は、鉄と炭素が分離して、炭素は、オーステナイト組織に
侵入してくんや! だから、左側のオーステナイト組織は、オーステナイト組織の単体になっとるやろ〜
セメンタイトが分離して、炭素がなくなってるんやで!
右側(炭素含有量が高い領域)では、オーステナイト組織に変化しても、
炭素含有量によって、セメンタイトが残っているから、共存してるんやで!
セメンタイトは、炭素と結びついた鉄と炭素の金属間化合物やったな! ここでも炭素やで!重要や!
ここをまとめると、727以下では、フェライト組織と共存してたセメンタイトの中の炭素は、
727度以上では、オーステナイトの組織内に侵入して一緒になり、
この一緒になることを、固溶すると言うんや!溶け込むイメージやな!
オーステナイト組織の特徴は、格子が広く、炭素が組織内に侵入してくることだったな!
鉄の組織と炭素が固溶した状態、それを固溶体言うんや
ここで、重要なこと言うで〜〜〜! めっちゃ重要やで〜〜〜!
鉄は、温度の加熱によって、組織変化 つまり、変態するんや!
その温度を変態温度と言い、変態と同時に、炭素の移動まで起こってしまうんや!
この変態(組織変化)と炭素の移動は、重要やから、覚えといてや!
次は、727度以上では、オーステナイト組織となり、炭素を含んだ固溶体となった状態で
加熱をやめて、温度が下がっていったら、どのような組織変化をするかが、問題なんや!
次行くで〜〜
レベル4 平衡状態図とマルテンサイト組織
727度以上で、オーステナイト組織となって、炭素を含んだ固溶体は、
冷却と共に、2つの道を辿るんや!しかし、この冷却の方法によってな!
重要なポイントの冷却とは、急冷か、徐冷 かの違いなんや!
急冷は、読んで字のごとく、真っ赤な状態から、水や油にぶっ込んで、
「ジュワア〜〜」湯気が「ボ〜〜ボ〜〜!」みないな感じやで、急速冷却やな!
徐冷は、ゆっくり冷ますことを言うんや!=徐々に冷ます
外で、放置プレイやな! 雨にあたって、「ジュ〜〜〜」は、無しやで!
まずは、徐冷のパターンは、フェライト組織に戻るんや! これ単純な理解やな!
この平衡状態図に載ってない登場人物やなくて、登場組織が2つあってな!
その1つが、マルテンサイト組織やねん!
つまり、727度以上の加熱で、オーステナイト組織となった固溶体が、急冷されると、
平衡状態図の番外へ!バッコーンと飛ばされて、変態するねん!
その組織がマルテンサイト組織で、特徴は、硬い組織やねん! 何となくわかってきたかいな〜!
わかってきましたよ〜!監督!
鉄は、加熱すると組織が変化するんですね。それが、変態であって、
727度が変態点なんですね。
変態点を超えると、フェライト組織からオーステナイト組織に
変態をして、そこで、重要なのは、炭素の移動が起こることなんですね。
オーステナイト組織は、組織構造が面心立方格子で、格子の隙間が広く
炭素の移動(侵入)が、行われて、固溶体となるんでしたね。
その通りや! 楽勝やろ!
マルテンサイト組織は、平衡状態図の登場組織には、無いけど
オーステナイト組織を急冷すると、番外に飛ばされて、
マルテンサイト組織に変態するんでしたね。これが、硬い組織なんですね。
鉄の分類の特徴でも炭素が多くなると硬く、脆くなる特性があったけど、
その炭素を固溶したマルテンサイト組織は、硬く、脆い組織なんですね。
その通りやで〜! 完〜〜全〜に、理解やな!
凄いで、組立くん 完璧な理解やで!
この変態(組織変化)のまとめを、下の図解で解説するで〜!
レベル5 変態と状態変化
727度以下の温度領域では、鉄の分類に関係なく、フェライト組織だったな!
状態図の右側、鋳鉄のレンジに入ると、炭素が増えるから、炭素は、鉄と連結して、
セメンタイト(炭化物)として、共存してるんやったな!
この727度が変態点と言って、変態を開始する温度なんや!
727度以上に加熱すると、フェライト組織は、オーステナイト組織に変態を開始するんや!
その時の重要な現象が、炭素の移動やな!オーステナイト組織の構造は、格子の隙間が広く、
炭素が侵入して、固溶するんやんで! ここで完成したのが、固溶体やな!
さらに、1000度以上に加熱すると、炭素含有量が多い鉄は、液状となるんだったな!
鋳鉄のレンジの特徴は、ドロドロの液状やったな!鋳物向けやな!
炭素含有量が低い炭素鋼や合金鋼を、ドロドロにするには、1500度までの加熱が必要なんやで!
この固体から液体になることを、状態変化と言うんんや!
これは、水が蒸気になったり、氷になるのと同じやな!
727度以上の領域で、オーステナイト組織となり、炭素を含んだ固溶体は、
冷めていく過程で、2つの道を辿るんやったな!
それが、徐冷(ゆっくり冷やす)されると、フェライト組織に戻るんやったな!
その際にも、炭素の移動があり、組織変化(格子の広さの変化)に伴って、
炭素は、格子の隙間から脱出して、セメンタイト(炭化物)となるんやったな!
急冷されると、マルテンサイト組織に変態するんやで!
刀鍛冶が、刀を加熱して、水に「ジュワ〜」と、あれと、一緒やで!
刀鍛冶の仕事は、鉄の焼き入れについて、理解を増やしてくれるから、大事な題材なんやで、
今度、解説することにするで〜 楽しみにしといてや〜!
話を戻すで、
組織の特徴を整理すると、フェライト組織は、軟らかく、延性があるのが特徴で、
マルテンサイト組織は、硬く、脆い特徴があるんや!
もうわかったと思うけど、
監督!わかりました。
焼き入れして、硬度を上げるには、このマルテンサイト組織にするんですね。
刀鍛冶が、刀を加熱して、真っ赤な状態で、水に浸けて、急冷することで、
刀は硬い、マルテンサイト組織となっているんですね。
しかし、この硬いだけの刀は、脆くて、直ぐに折れてしまうんじゃないですか?
それに、炭素含有量が多い鋳鉄は、鋳造した時に、高温な状態で、マルテンサイト化して
いるんだから、硬く脆い鋳物になってるんですよね?
めっちゃくちゃ!いいところに気がつくんやんけ〜!
やりよるな!組立くん!
その通りや! マルテンサイト化しただけの鉄は、
ただ硬いだけで、脆く弱いんや!
鋳造品(鋳物)や鍛造品も熱を使って、加熱して、加工するんやけど、その時も
この変態(組織変化)が関わってくるねんな〜!
だから、この熱影響を利用したのが、調質(焼き入れ、焼き戻し)なんや!
機械的性質を調整することが、熱処理の目的で、この熱影響を利用してるんや!
次回は、焼き入れの解説に行くんやけど、最後に、
平衡状態図のもう1つの登場組織の解説をしとくわ〜
レベル6 炭素鋼の組織変化(変態)
これが、熱影響の最後の図解やで!
この平衡状態図は、先ほどのレベル3で、鋼のレンジの組織変化は、あとで説明するから、
ぶっ飛ばしておいたけど、ここで、解説するで〜!
最後の登場組織は、パーライト組織や!!
パーライト組織は、他の組織と違う点があってな! 共析してんねん!
共析とは、固溶体が温度低下により、2種類の固相成分に分解する現象やねん!
2種類とは、フェライト組織とセメンタイト(炭化物)やけど!
つまり、パーライト組織とは、黒いセメンタイトと白いフェライトが、
シマウマ模様になった感じの組織やねん!
特徴として、軟らかく延性のあるフェライト組織と、粘りのある強いセメンタイトとが合体した
複合鋼材なんや!
この状態図に、参考として、SM400とS45Cを載せているけど、この共析が起こる炭素含有量の点を
共析点と言ってな、ズバリ! 炭素含有量 0.765%やねん!
炭素鋼や合金鋼の鋼のレンジでは、このシマウマ模様のパーライト君が、重要な鍵になるんや!
焼き入れするのには、オーステナイト組織にするのが、必要不可欠で、急冷して、マルテンサイト化が
重要なポイントなんやけど、共析点(炭素量 0.765%)があり、炭素含有量が、共析点では、
オーステナイト組織は、冷却される過程で、シマウマ模様の層状の組織である
パーライト組織になるんや! これも、平衡状態図の番外に飛ばされた組織やねん!
オーステナイト組織からしか、現れないから、パーライト組織とマルテンサイト組織は、
わかりずらいんやな!
パーライト組織、重要やから覚えておいてや!
監督! よくわかりました。やっぱり、炭素量が重要なんですね。
調質(焼き入れ、焼き戻し)するには、この変態(組織変化)の理解が重要で、
加熱温度と炭素含有量が、重要なんですね。
焼入れは、変態点(727度)を、超えて加熱することで、
オーステナイト組織にすることが、必要不可欠なんですね。
常温時では、オーステナイト組織は、存在しないですからね。
その通りやね! 炭素!炭素!と何度も連発してるけど、やはり重要やな!
間違いないで〜〜!
あと、忘れてないけないのが、冷却温度やねん!
理解してますよ。
急冷と徐冷でしたね。
急速冷却(水や油にポチャ〜ん & ジュ〜〜)と、
ゆっくり冷却(放置プレイ)でしたね。
調質とは、炭素含有量と変態(組織変化)と加熱温度と冷却温度を、駆使することで、
機械的性質をコントロールすることなんですね。
あと、炭素の移動が、硬度と割れに重要な影響を与えるんですね。
この超重要なポイントの割れは、どこで出てくるんですか??
流石やね!組立くん 完〜全な理解やな!やりよるな!
いい感じの理解やで、この知識があれば、次の焼き入れは、楽勝やで〜!
熱影響と焼入れは、めっちゃ重要なんや、それと、
熱影響の最終章は、やはり溶接割れやねんな〜
炭素の移動による割れは、溶接の時に、出てくるんやで〜
ちなみに、組立くんは、溶接できるんかいな?
出来ません!
特別教育は、受講して、取得しているレベルで、実技は、まだまだです。
溶接は、うまくなりたいっすぅ!
全く問題やしやで!
溶接に関しては、知識も重要やけど、やはり、技術が大切やな〜!
溶接編では、知識と、合わせて、技術も解説するで〜
まずは、次の焼き入れに関してやな! では、次回まで、楽しみに待っといてや〜
熱影響と焼入れの関係について解説 下記の記事を参考にして下さい。