この記事の内容は、下記の質問にお答えします。
- 機械的性質とは、どんな性質なの?(機械的性質を細分化して解説)
- 弾性変形と塑性変形の違いは、どんな違いがあるの?
- 鉄の強度とは、どんな強さなの?(降伏点と引張強度の違いについて解説)
- 鉄の硬度とは?(硬度の単位、硬度の測り方、硬度の数値化を解説)
- 衝撃値とは?(シャルピーの衝撃値、吸収値について解説)
![組立くん](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/05/23281760-150x150.jpg)
監督!前回の解説で、鉄には、分類があり、
鉄と鋼と鋳鉄のレンジがあることが、分かりました。
特徴として、炭素の含有量が多くなれば、硬度が上がるかわりに、脆くなる性質が
あるんでしたね。炭素量が多いと、熱影響が大きいので、溶接性は悪くなるけど、
焼き入れ性は上がるんでしたね。そして、
鋼のレンジの中でも、炭素鋼(5大元素で造られる鋼材)と
合金鋼(5大元素とそれ以外を添加して造られる鋼材)があることが分かりました。
溶接性に関しては、炭素含有量が0.2%前後が最適で、
SM材が溶接構造用鋼材でしたね。
炭素含有量が少ない鋼材は、SS材、SPC材、SM材とがあり、
合金鋼の高張力鋼やHARDOXは、炭素含有量を落として、溶接性も良くして、
尚且つ、クロム、ニッケル、モリブデンなどの元素を添加することと、
調質(焼き入れ・焼戻し)をすることで、機械的性質を上げているんでしたね。
鉄の分類は、3つあります。純鉄 鋼 鋳鉄 詳しくは、下記の記事を参考にして下さい。
![現場 監督](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/05/aa3fe89ddaca2c63ea288ff475fb3faf-150x150.png)
その通りやで!よく理解しとるやんけ!
![組立君](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/05/23265285-150x150.jpg)
監督〜!
機械的性質のワードが時々出てきますが、よく分かりません。
もう少し、解説をお願いします。
![現場 監督](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/05/aa3fe89ddaca2c63ea288ff475fb3faf-150x150.png)
よっしゃ!今回もバコーンと、解説いくで〜
レベル1 機械的性質
機械的性質とは、機械特性とも言われるんや!
鉄の優劣を決める物差しで、また、数値化された成績表の項目みたいなもんやねん!
数値化されへんと、優劣はわからんやろ!
鉄の成績表の項目はというと、硬度、靱性、延性、脆性があったけどな!
もっと重要な項目が、強度やねん!
強度と言っても色々あってな、重要なんは、
引張強さ(最大強度)、降伏点、硬度、衝撃値があんねんな!
鉄の優劣 良し悪しを判断する項目として、鉄の強度を詳しく解説するで〜
まずは、引張強度から説明するけど、そも前に、鉄の変形について、解説しとくで〜!
レベル2 弾性変形と塑性変形
![](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/06/8459a06e9c1bbf856762bd526c81abad-1024x576.png)
上のグラフは、鉄の引張強度を示しているグラフで、よく見かけるけど、鉄の変形の特性には、
弾性変形と塑性変形があるねん!
鉄は、力を加えると変形をする性質があるんやけど、
直ぐにポキッとは、折れたり、壊れたりしないんや!
弾性変形とは、ある一定まで引っ張る力に対して、元に戻る変形のことを言うんや!
弾力がある鋼材という意味やで!
しかし、ある一定の力を、更に加えると、弾性の限界が来て、元に戻らなくなるんや
その戻らなくなる点が、弾性の限界で、弾性限度=降伏点とも言うんや!
負けたー!みたいな感じやな!もう戻れへ〜ん!みたいな感じやな!
弾性変形に対して、元に戻らない変形のことを塑性変形と言って、永久歪とも言われるんや!
塑性変形を利用しているのが、プレスなどの曲げ加工なんやで!
そんでな、更に力を加えると、最大強度まで、歪=変形していき、最大強度を超えると
亀裂が発生して、強度が落ちて、破損してしまうんや!
レベル3 降伏点と引張強度
もう一度、下のグラフの降伏点から破断までを解説するとやな!
![](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/07/da83d76e49789589b8b0dcd96e5baa32-1024x576.jpg)
まず弾性限度を超える力がかかると、鉄は元に戻らなくなり塑性変形を始める
降伏点を超えてしまうと、塑性変形は続き、力を弱めても、変形は続くんや!
しかし、鉄は、ここから更に力を加えないと、
つまり、降伏点を超える力を加えないと変形しなくなるんや!
ここが重要なポイントで、鉄の優劣を決める引張強度は、赤のポイントの最大強度だと言うこっちゃ!
降伏点が引張強度ではなく、そこから更に強い力の最大強度が引張強度で、
鉄の優劣を決める項目なんや!
最大強度を超えると、亀裂が発生して、最大強度を下回る力でも変形していくが、
最終的に、破断してしまうんや!
降伏点と引張強度は、比例する関係にあるから、降伏点が高い材料は、剛性があり、強い鉄と言えるし
引張強度を超えて、破断する時も、伸びながら徐々に破断すると、延性がある材料と言える、また
引張強度を超えて、粘り強く、耐えながら、破断する材料は、靭性がある材料と言えるんやで!
![組立くん](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/05/23273885-150x150.jpg)
鉄の変形(歪み)と応力(力)の関係が分かりました。
弾性変形と塑性変形があり、変形しにくい鉄が剛性があり、強い鉄なんですね。
鉄の引張強度を決めているのは、最大強度で、降伏点を超えて、更に強い力を加えて、
変形していき、最終的に破断してしまうんですね。
その破断の際も、伸びながらや耐えながらで、延性があったり、靭性があったりと
それぞれの鉄の機械的性質があるんですね。
![現場 監督](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/05/8783d37f64547c5bff69e11e34333d67-150x150.png)
いい〜感じで理解してるやんか!
そのお通りやで! 楽勝やろ!
次は、硬度と衝撃値やな!
ほな!解説いくで〜!
レベル4 硬度
次に硬度について、解説するで〜!
硬度とは、鉄の硬さのことで、硬いとは、傷のつきにくさと理解すればいいと思うで!
下の表は、硬度変換表の一部を、俺的にまとめたものやけど、簡単な抜粋表で
数値は参考値としてくれや!
縦軸に今まで出てきた材質があり、(SS材、S45C…)
横軸にピッカース硬さ、ブルネル硬さ、ショア硬さ、ロックウェル硬さがあるんや!
硬度の単位は、複数あり、それぞれ、ピッカースさん、ブルネルさん、ショアさん、
ロックウェルさんが導き出した算出方法で、数値化されているんや!
各単位=数値が違えど、同一の試験片では、硬度は変わらないから、硬度の表記には、
換算表で、比較することができるんや!
例えば、ピッカースのHV表記の試験片の硬さと、ブルネルのHBの表記の試験片の硬さを
比較したい場合は、どちらかの単位に統一して、比べる必要があるやろ!
そこで、役立つのが換算表で、ピッカースでは、120HVだけど、ブルネル硬さでは
114HBと言え、どちらかに置き換えて、見比べれば、同等の硬度と言えるやろ!
![](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/07/8eca0667669972c76eb1359e1c8e5b07-1024x576.png)
この4つ以外の硬度の単位もあるけど、ここでは取り敢えず、この4つで解説するで〜!
次に試験方法の説明やけど、下の図解を見てほしいんや
![](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/07/48ad5cff26818636f53f8a1ceed823d9-1024x576.png)
![](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/07/5689bca633fcb4502702016324cc06fc-1-1024x576.png)
ピッカース硬さとロックウェル硬さの試験方法を図解にしてみたけど、
まず、ピッカース硬さ試験は、ピラミット形状で、ダイヤモンド製の圧子と呼ばれる工具を
試験片に押し付け、傷をつけるんや、傷の大きさを測って、どのくらいの力で
どのくらいの大きさの傷がついたかを、計測して、数値化してるんや!
ロックウェル硬さ試験は、先の尖った工具を押し付けて、試験片に着いた傷の深さを計測して
数値化した試験方法で、基本的には、同じ考え方の試験方法と言えるわな〜
硬度=硬さとは、傷の付きずらさと言ったけど、この傷の付きずらい硬い鉄のことを
硬度があるって言ってるんやで!
レベル5 シャルピー衝撃値
次にシャルピー衝撃値やけど、シャルピー衝撃吸収値とか、ごちゃごちゃしてるけど、
衝撃値の理解でいいと思うで〜 でも、吸収とはと言うと
まず、試験方法を下の図解で解説するで〜!
![](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/07/3a0975512617b51406f698984505afe0-1024x576.jpg)
棒状の試験片があって、その試験片は、真ん中に敢えて、傷が付けられていて、そこから破損しやすく
されてんねん!その試験片にハンマーを振りかぶって、叩きつけて破壊する試験やねん!
つまり、破壊試験やな! 試験片を破壊するのに、ハンマーをどこまで振りかぶって、叩きつけるかで
破壊に必要なエネルギーを算出してるんや!
それで、破壊した後のハンマーは、逆側に振り上がるやろ〜、その振り上がりの角度を
計測しといて、試験片がどれだけ、破壊エネルギーに対して、耐えたか=衝撃を吸収したかを
計測してるんや!前に、引張強度のところで、破断する時に、伸びながら破断することを
延性破断と言い、耐えながら破断する事を靭性破断と、説明したけど、あれやな!
例えば、振り上げ(振りかぶり)角度を4.5として、試験片を破壊して、振り上がり角度が
2.5と4とを比較すると、4まで振り上がった方が、衝撃を吸収できていない、
衝撃吸収値が低い試験片と言えるんや!
ここでの破断の様子や破断面を研究する事で、鉄の強度がわかるんやで!
延性があるとか、靭性があることな!
この鉄は、「スパッと」割れるように、破断したから、脆性がある=割れやすいとかが、
判断できるんやで!
![組立くん](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/05/23281770-150x150.jpg)
機械的性質とは、鉄の成績表をつけるときに、必要な項目でしたね。
小学生の時の体育の鉄棒の評価みたいな感じですね。
A B C D みたいな感じですね。数値化しないと、良し悪しが判断できないですからね。
その中で、数値化されているのが、
引張強度、硬度、シャルピー衝撃値でしたね。
あと、伸びる性質=延性 耐える性質=靭性 脆い性質=脆性
変形しずらい性質=剛性とかが、あるんでしたね。
![現場 監督](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/05/aa3fe89ddaca2c63ea288ff475fb3faf-150x150.png)
その通りやで〜
よく理解しとるやんけ! 楽勝やろ!
鉄の評価に関しては、もっとあると思うけど、今後、組立くんが
鉄に関しての資料を読んだり、材料屋さんと打ち合わせをするレベルでは
このあたりを理解しとけばいいと思うで〜
硬度に関しても試験方法や単位は、まだあるけど、今回の4つを覚えておけば、OKやで〜!
まあ、どの単位でも換算表があるから、今回は、説明しやすいように
抜粋の表にしたけど、鉄や非鉄、いろんな材料の硬度一覧表がり、換算表があるから
見比べつと役に立つと思うで〜
![組立くん](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/05/23273894-150x150.jpg)
監督〜!! 質問です。
炭素が多いと硬度が上がったり、熱を入れると硬度が上がったりと、鉄が何で硬くなったり、
柔らかくなるのかが、理解できません、
溶接性に関しても、よくわかっていません。
教えたください。
![現場 監督](https://kikaiyacircle.com/wp-content/uploads/2023/05/0d8f1ae7021ad4fbdb1b2b84d4c9d028-150x150.png)
お〜!ナイスな質問やな〜!
やっぱり、そこは、気になるよな〜〜!
わかるで〜その気持ち!
でも、熱影響に関しては、次回にしょう
溶接に関しては、熱影響を理解した上で、溶接の知識を深めてからの解説にしようや!
その解説の流れが大事で、理解の順番を、エクストリ〜ム(川の流れの様に)で解説すると、
もっと理解が深まると思うから、次回もバコーンんと解説するで〜
楽しみにしといてや!
鉄の熱影響について、熱影響を受けると鉄の組織はどうなるの?
次回は鉄の熱影響について解説しています。是非、参考にして下さい。